産後の腹痛と漢方
産後に体の不調が見られるケースは多く、特に授乳期となると安易に薬を飲むことに抵抗を感じる人も少なくありません。出産後の体調不良は時には長引くこともあるため、できるだけ早く解決することをお勧めします。今回は産後の腹痛の原因と解決方法です。
産後の腹痛の原因
血虚失養
血虚失養とは血の量や働きが低下したことで各組織に栄養がいきわたらない状態です。
出産により大量の血が失うと、子宮に栄養が行きにくくなります。
漢方の世界では『不養即痛』という概念があり、栄養が十分に届いてない場所は痛みを起こすと考えます。不養即痛の特徴はシクシクとした痛みが起きることです。
気血には気血同源という概念があり、気の不足は血の不足を招き、血の不足もまた気の不足を起こします。そのため、気の不足により血の流れの低下も招いてしまいます。
血虚失養で起こりやすいその他の症状
- 眩暈
- 脱毛
- 動悸
- 不眠
- 不安感
- 皮膚の乾燥
- 軽度の便秘
血瘀阻絡
血流が悪くなることで痛みを起こす状態です。
産後はストレスや精神疲労、不規則な生活などから肝の働きが乱れ、気の流れが悪くなります。気の流れが悪い状態を『鬱滞』と呼びますが、まさに『鬱』は気の流れが悪い状態を指します。
気の流れが悪くなると血の流れも悪くなります。
血の流れが悪い状態を瘀血と呼びます。
そのため、気の流れが悪くなることで血の流れも悪くなってしまう事を気滞血瘀と呼びます。
血瘀による痛みには『不通則痛』という概念があります。
血虚失養の不養即痛がシクシクとした弱い痛みであったのに対し、不通則通は比較的強い痛みであることが特徴です。
血瘀阻絡で起こりやすいその他の症状
- 悪露が暗い色で時に塊がある
- 四肢が冷える
- 胸やわき腹が張る
- こめかみの頭痛がある
- 目の下にクマがある
漢方薬とお勧めの食材
血虚失養
血虚失養は不足している気血を補う漢方薬を選ぶことが大切です。
代表的な漢方薬に十全大補湯や婦宝当帰膠、帰脾湯が挙げられます。
お勧めの食材
- カボチャ
- ニンジン
- ジャガイモ
- サツマイモ
- サトイモ
- 山芋
- 椎茸
- 肉類
- 舞茸
- タコ
- イカ
- 卵
- 米
- 小麦
- 鯵
- 鰯
- 鰹
- 鯖
- 秋刀魚
- 鮭
- 鱈
- 鰻
- ホタテ
- ほうれん草
- 小松菜
- 玉葱
- 牡蠣
- ひじき
- ブドウ
- イチゴ
- サクランボ
- モモ
- ライチ
血瘀阻絡
血瘀阻絡は気血の巡りを改善する漢方悪をお勧めします。
代表的な漢方薬には冠元顆粒、、温経湯、血府逐瘀丸、桂枝茯苓丸などが挙げられます。
血瘀も気血の不足も見られる場合は婦宝当帰膠もお勧めです。
イライラや鬱が目立つ場合には逍遥散や加味逍遙散も併用すると良いでしょう。
お勧めの食材
- ニラ
- ネギ
- 玉葱
- ナス
- 鯵
- 鰯
- 秋刀魚
- ひじき
- サクランボ
- 桃
- 紅花
産後は気血不足の中で育児をするため、母体には強い疲労とストレスがかかります。
そのため、産後は家事などを可能な限り手伝ってもらい、母は心身の休息に努めることが重要です。
漢方薬や食事で気血を補い、巡りを良くしつつ、過度な疲労状態にならない生活を心がけてください。