生理痛と漢方

生理痛は昔から「痛経」と呼ばれ、多くの女性を悩ませてきました。生理痛はよくみられるものですが、検査などを行っても異常がない場合がほとんどです。しかし、異常がないからとほっておくと日常生活に影響を及ぼしかねません。
漢方は生理痛を得意としているため、生理痛で悩まれている女性にはぜひ試してほしいと思います。

生理痛の原因

気滞血瘀

気滞血瘀とは気の巡りの悪さと血の巡りの悪さが併発している状態です。 気滞血瘀が原因となる生理痛はとても多いです。 気滞とは今でいうところの精神情緒の乱れ(ストレス、イライラ、憂鬱、怒りっぽい、落ち込む)を言います。
血瘀(けつお)は血行不良に相当するものです。 つまり気滞血瘀による生理痛はストレスを感じやすく血流が悪い人に起こります。 ストレス&運動不足の現代人に多くみられます。

気滞血瘀に特徴的な症状

  • 生理前に胸が張る
  • 生理中に強い痛みがある
  • 経血に血の塊がある
  • PMSが強い
  • 頭痛や肩こりがある
  • 四肢が冷えやすい
  • 目の下にクマができやすい
  • 唇の色が暗い

寒凝胞中

寒凝胞中とは下腹部が冷えることです。 下腹部が冷えることで血行不良を起こし瘀血を発生させます。 漢方には『不通則痛』という概念があり、気や血の流れが悪い場所は痛みを発生させます。 寒凝胞中は胃腸の弱い人、クーラーのある部屋に長時間いる人、ビールなどの冷たい飲み物を飲む人、生ものや生野菜を中心に食べる人などに多く見られます。

寒凝胞中に特徴的な症状

  • 生理前、生理中に下腹部が痛む
  • 生理量が少ない
  • 四肢の冷え
  • 舌が白っぽい
  • 顔色も白い
  • 浮腫みやすい
  • 食欲がないわりに太っている
  • 軟便傾向である

気血虚弱

気血虚弱は気(エネルギー)と血(栄養)がともに不足している状態です。
血には栄養を与える役割があり、血が不十分になると『不栄則痛』という痛みを起こします。
また、気は血を全身に流す役割もあるため、気が不足すると血行不良も招き、さらに『不栄則痛』を促進してしまいます。
気血虚弱は胃腸の弱い人やダイエット中の人に多くみられます。
気血虚弱による生理痛は気滞血瘀や寒凝胞中とは異なり、無理に血流を良くしたり、気の流れを良くしようとすると気血の不足を招き、改善が見込めないこともあるので注意が必要です。

気血虚弱に特徴的な症状

  • 疲労感
  • 眩暈
  • 立ち眩み
  • 顔色が良くない
  • 生理の量が少ない
  • 生理の後半に鈍い痛みがある
  • 不安感
  • 肌荒れ
  • 眼精疲労

漢方薬とお勧めの食材

気滞血瘀

気滞血瘀は気の巡りを良くし血流を改善する漢方薬がお勧めです。
気滞を改善する代表的な処方として逍遥顆粒や冠元顆粒があります。逍遥顆粒は柴胡や薄荷などの気の流れを良くする生薬と白朮、茯苓、甘草などの消化器系の働きを良くする生薬を中心とした処方です。
似た処方に加味逍遥散がありますが、牡丹皮や山梔子など涼性の生薬が入っているので、冷え症の人にはお勧めできません。
冠元顆粒は瘀血の改善に特化しているので、瘀血症状が強い場合は優先することがあります。
他にも桂枝茯苓丸や温経湯、血府逐瘀湯などをお勧めすることもあります。

お勧めの食材として

  • キャベツ
  • ニラ
  • ネギ
  • レモン
  • ミカン
  • 玉葱
  • ナス
  • 秋刀魚
  • ひじき
  • サクランボ
  • 紅花

寒凝胞中

寒凝胞中は、胃腸の働きを良くし、体を温め、血流を改善する漢方薬がお勧めです。
下腹部を温める代表的な処方として参茸補血丸があります。参茸補血丸は鹿茸、杜仲、当帰、龍眼肉、人参、黄耆、巴戟天、牛膝からなる処方で構成生薬のほとんどが温性であり、冷え症にお勧めの処方です。また、滋養強壮作用も高いため、虚弱体質や肉体疲労、血色不良にもお勧めです。
その他にも当帰四逆加呉茱萸生姜湯や冠元顆粒、温経湯などを用いる場合もあります。

お勧めの食材として

  • ニラ
  • ネギ
  • 玉葱 
  • 秋刀魚
  • ひじき
  • 紅花
  • エビ
  • 羊肉
  • 生姜
  • シナモン

気血虚弱

気血虚弱は、気と血を同時に補う必要があります。
代表的な処方に婦宝当帰膠や帰脾湯、当帰芍薬散、人参養栄湯、十全大補湯などがあります。特に婦宝当帰膠は補血作用のすぐれた当帰を大量に用いた処方で、同時に止血作用のある阿膠が配合されていて効果を高めています。また、党参、黄耆、茯苓、甘草など補気作用のある生薬も入っています。
似た処方に当帰芍薬散があります。婦宝当帰膠ほど補血作用のある生薬が配合されていませんが、白朮、沢瀉などが入っているので胃腸の弱りからくるむくみなどに効果的です。

まとめ

一口に生理痛といっても激しい痛み方や弱い痛み方があり、原因も様々です。
まるで鍵穴と鍵のように自分の生理痛に合った対策をとればとても良い改善が見込めます。
婦人病は漢方の得意分野です。ぜひ生理痛でお悩みの方はご相談ください。

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