不眠に使用される漢方薬 酸棗仁湯
酸棗仁湯(さんそうにんとう)は不眠に対し使用される代表的な漢方薬の一つです。
今回は酸棗仁湯がどの様な特徴を持つ漢方薬であるかを解説し、そのうえでどのようなタイプの不眠に効果的なのかをご紹介したいと思います。
酸棗仁湯とは
酸棗仁湯は酸棗仁・炙甘草・知母・茯苓・川芎からなる処方です。
養肝血・安心神の働きを持つ酸棗仁が主薬で、その他の生薬が補佐的に働いています。
川芎は肝血を養うサポートをしながら気の巡りを良くしています。
茯苓は寧心安神の働きを持ち、酸棗仁の安神作用を補助しています。
知母は滋陰清熱・除煩の働きにより、心火(興奮など)を清し、落ち着かせます。
炙甘草は全体の生薬のバランスを整えています。
このように酸棗仁湯は肝血を補う事で精神を安定させつつ、肝心の火を清することで心の働きを正常化し不眠を改善します。
酸棗仁湯が効果的な不眠のタイプ
処方の意図からも分かるように、酸棗仁湯が効果的な不眠のタイプは肝血が不足して、虚火(陰が不足したことで相対的に陽に傾いた状態)が発生しているタイプと言えます。
誤解を恐れずに砕いて書けば『過労状態でありながら、イライラや興奮が発生して眠れないタイプ』とも言えるかもしれません。
五行学説において肝と心は親子の関係にあるため、肝で発生した火が子である心に移ります。
心火が生じることで、『神』は不安定になり不眠を生じます。
この不眠のタイプによくみられる症状は
- 寝つきが悪い、夢が多い、驚きやすい
- ため息をつきやすい
- 鬱々、イライラ、怒りっぽいなどの精神状態になりやすい
- 目が充血しやすい
- 筋肉がピクピクする
- 頭痛がある
などの特徴が挙げられます。
また、<金匱要略>には『虚労、虚煩し眠るを得ざるは、酸棗湯これを主る』と記載されています。
この点からも
- 疲労状態なのに頑張り過ぎている人
- 生理がある女性で血虚の症状が目立つ人
- ストレスを多く抱えている人
- デスクワークなどで肝血の消耗が激しい人
に使用されるケースが多い処方とも言えるでしょう。
酸棗仁湯は肝血不足による虚火が原因で起こる不眠に使用されます。
酸棗仁湯の効果を高めるためにも、運動をしたりリラックスする時間を持つとともに、過労になりすぎないように十分な休養をとることも意識しましょう。
イライラなどが強い場合には加味逍遙散・逍遥散・柴胡加竜骨牡蠣湯などと併用することも検討しましょう。