不眠を引き起こす感情
『イライラして眠れない』
『考え事があって眠れない』
そんな経験は誰もが一度は経験したことがあると思います。
不眠を引き起こす原因は体調不良だけではなく、感情の乱れが不眠を引き起こすこともあります。
不眠を引き起こす感情と五臓の関係
漢方の世界では不眠とつながりがある感情として『憂い・怒り・思い(悩み)・悲しみ』が挙げられますが、特に注意が必要なのが『怒り』『思い(悩み)』です。
感情は五臓と関係が深く、特に『怒り』は肝の働きを乱し、『憂い・思い(悩み)』は脾の働きを乱します。
怒りと肝
肝は疏泄機能と呼ばれる、現代でいう自律神経を整える働きがあります。
肝が安定していると気血は巡りが良くなり、怒りの感情により肝の働きが悪くなると気血の巡りは悪くなります。
特に気は陽の性質(熱、上昇、興奮、外向き)があるため、巡りが悪くなった気は頭部へと上昇します。
頭部には脳があるため、そこに過剰な気が溜まってしまうと脳が興奮し眠れなくなってしまうのです。
このタイプの人は…
- 頭痛がする
- 目の奥が痛む
- 気が付くと体に力が入っている
- 眉間に力が入っている
- 落ち着かない
- 攻撃的なイメージが浮かぶ
などの特徴も出てきます。
西洋医学的にも怒りはノルアドレナリンを発生させ、心拍数を上げたり体温を上昇させて寝つきを悪くすることが分かっています。
西洋医学的にも漢方医学的にも『怒り』を寝室に持ち込まないのは、質の良い睡眠にとても大切な事と言えるでしょう。
思い(悩み)と脾
『脾は思を主る』という言葉があるように、考え過ぎや悩みすぎは脾の働きを低下させます。
脾は『気血生化の源』とも呼ばれ、食べたものから気血を作る要であり、現代でいうところの消化器系に近い存在と言えます。
考えすぎると脾の働きが低下して気血を作る力が弱くなります。
気血が不足し五臓の中の一つ『心』を正常に働かせることができなくなると、心が不安定になり不眠を引き起こします。
『悩み事があって食事が喉を通らない…』そんな時に起こりやすい不眠と言ってよいでしょう。
このタイプの人は…
- 食欲不振
- 疲労倦怠感
- 動きたくない
- 眠りが浅い
- 表情が乏しい
などの特徴も出てきます。
不眠を引き起こす感情を防ぐために…
『怒り』と『思いすぎ』は両方とも不眠を引き起こす原因になる感情です。
しかし、二つに大きな違いがあるとすれば、怒りは突発的に不眠を引き起こすことがありますが、思い過ぎは長期的に続いた場合に不眠を引き起こす傾向があります。
怒りの感情による不眠を防ぐには、寝室に怒りの感情を持ち込まない事です。
日中に怒りの感情が生まれたのなら、帰宅前にどこかに立ち寄るのも良いでしょう。
また、喧嘩になりそうな話し合いは夜には行わず、朝に行う事も大切です。
刺激的な格闘技やスポーツ観戦も質の良い睡眠を考えると夜は観ないほうが良いでしょう。
漢方薬であれば加味逍遙散や抑肝散、能活精などが良く使用されますが、体質に応じて使い分ける必要があります。
思い悩みによる不眠を防ぐには、脾の働きを良くする食材をとることです。
芋類は全般的に脾の働きを良くしますが特に山芋はお勧めです。
また心の働きを良くするピーマンやリンゴ、小麦、山査子なども一緒に食べると良いでしょう。
思い悩んでいるからと言って全く食べないのは逆効果と言えます。
悩んでいるときに『美味しい物でも食べて元気出しなよ!』はあながち間違いでもない、ということですね。
漢方薬は帰脾湯や加味帰脾湯などが有名ですがそれ以外にも体質に応じて使い分ける必要
があります。
ストレス社会と呼ばれる現代、日々『怒り』や『思い悩み』の感情に振り回されている人も多いと思います。
もしそのような感情が原因で不眠が起きている場合は、日々のメンタルコントロールに漢方薬を利用することはとても意味があると言えます。
漢方薬を上手に使って、穏やかな感情でベッドに入れるようにしたいですね。
ぐっすり眠れればネガティブな気持ちもきっと改善されるでしょう。