悪夢と漢方薬
皆さんはいい夢を見ていますか?
中には、悪夢にうなされる事が多い人も多いかもしれません。
漢方や中医学の世界では、古来より悪夢の研究がなされており、主な原因として心脾両虚・心腎不交・痰熱内擾が挙げられます。
心脾両虚(しんぴりょうきょ)
中医学において心は精神活動を司る場所と考えています。
心の気血が不足することで精神活動が上手く行えなくなり、不眠や悪夢をもたらすと考えます。
気血の生成には脾の働きがとても重要で、脾は『気血生化の源』とも呼ばれています。
脾は現代でいうところの消化器系に近い存在です。
体質的に脾が弱いために心を正常にするための気血が生成されず、心が弱っている状態と考えて良いでしょう。
心脾両虚の人の特徴は
- 胃腸が弱い
- 軟便
- 疲れやすい
- 不安感
- 息切れしやすい
- 眠りが浅い
- 物忘れが多い
- めまい
- たちくらみ
- 貧血
などが挙げられます。
このタイプの人は心と脾を元気にする心脾顆粒(しんぴかりゅう)がお勧めです。
心と体を元気にして睡眠の質を高めてくれるでしょう。
心腎不交(しんじんふこう)
中医学において心の火を鎮めるのは腎の水と考えます。
更年期障害や加齢などが原因で腎の水が不足してしまうと心の火を抑えることが出来なくなり、精神が興奮状態になりやすくなります。その結果、睡眠が浅くなり、夢を見ることが増えてきます。
心腎不交の人の特徴は
- 火照り
- のぼせ
- 煩躁
- 足腰の怠さ
- 寝汗
- 足腰が冷える
- めまい
- 耳鳴り
- 物忘れ
などが挙げられます。
心腎不交の人は、心の火が燃えやすいため、怒りっぽくなったり、落ち着きがない事も特徴です。
そのため、日中にイライラする事や焦る事も多くなります。
ある研究では覚醒時に感じた感情は35~55%の確率で同じような感情をもたらす夢を見る事があるそうです。そのため、日中にイライラやいら立ち、焦ることが多い人は同じような感情をもたらす夢を見る傾向があります。
このような場合は心腎のバランスを整える天王補心丹や過剰に溜まった陽気を降ろす重鎮安神薬などが良いでしょう。
痰熱内擾(たんねつないじょう)
暴飲暴食や飲酒、味の濃いものを好む、油っこいものを好むと体に余分なもの『湿』がたまります。湿が長期間溜まると粘り気の強い『痰』になります。さらに痰が長期間、留まると熱を帯び『痰熱』という状態になります。この痰熱は心を侵し、精神状態を不安定にさせ悪夢の原因になります。
痰熱がある人の特徴は
- ソワソワしやすい
- 落ち着きがない
- 頭重
- 口臭
- 口の中が苦く感じる
- 胸やけ
- 悪心
- 便臭がきつい
- 痰が多い
などが挙げられます。
痰熱を改善する漢方薬としては有名なものに温胆湯があります。脾胃の弱りから痰熱が発生してしまう場合には消化を助ける漢方薬などを併用することも良いでしょう。
悪夢は単なる偶然ではなく、体調不良のサインになっていることが多いです。
悪夢を引き起こす原因は様々あり、その人の体質に合わせた改善が必要です。
悪夢の原因は併発している可能性もあるため、体質を見極めるためにも必ずご相談ください。