不眠症とアルツハイマー型認知症と漢方薬

アルツハイマー型認知症とは脳の神経細胞が減ってしまうことで記憶や思考能力・認知機能が徐々に低下していく病気です。
日本ではおよそ460万人と言われ、今後も高齢化が進むにつれて増加が予測されています。
主な原因として周囲の脳細胞を破壊する特性を持つβアミロイドなどの異常たんぱく質が蓄積することが挙げられます。

不眠とアルツハイマー型認知症の相関性を考えるうえで重要なのが、アルツハイマー型認知症の初期においてβアミロイドが前頭葉の真ん中に多く見られる点です。前頭葉の真ん中は深いノンレム睡眠を作り出す場所でもあります。カリフォルニア大学の研究においてもβアミロイドの蓄積が多い人ほど深い睡眠の質が損なわれることが分かっています。
深い睡眠、つまりノンレム睡眠の質が低下することで記憶の定着を阻害する可能性があります。
良質な睡眠のためにも脳内でのβアミロイドの蓄積をいかに防ぐかが重要と言えます。

βアミロイドを除去するうえで、ロチェスター大学が興味深い発表をしました。
それは十分な睡眠をしている最中、脳内ではβアミロイドが掃除されている、というものでした。βアミロイドのみならずタウ蛋白などアルツハイマーに関係性があるとされる有害物質も掃除されていることも分かっています。
睡眠時間が短い人は脳内の有害物質の除去がうまく行われない、ということです。
つまりアルツハイマーと不眠症は『卵が先か鶏が先か』に近く、お互いを引き寄せる悪循環になるということです。

そのため、世界ではアルツハイマー型認知症を防ぐ方法として睡眠の質を上げる研究がなされています。

漢方における不眠とアルツハイマー型認知症

漢方ではアルツハイマー型認知症の原因として、腎の衰えを考えます。

漢方において五臓の中の『腎』には『腎は精を蔵し、精は髄を生み、髄は脳髄に通じる』という考え方があります。『高齢で記憶のなくなる者は、脳髄が空虚になるから』という言葉もあります。つまり、腎が良い人は脳の働きが良く、腎が衰えてくると記憶力や思考力の低下につながるのです。
腎が弱っている人の特徴は

  • 物忘れが目立つ
  • 聴力が減退する
  • 思考力が低下する
  • 脱毛、白髪
  • 歯が弱くなる
  • 腰痛
  • 骨が弱くなる
  • 生命力の低下
  • 意欲の低下
  • 不眠

などが挙げられます。

腎の衰えは高齢者の不眠の原因にもなります。
これは『心腎不交』と呼ばれ、腎が弱ること陰(静止)が不足しで心(脳)の陽(活動)が抑えられなくなる、という状態です。
就寝時間になっても脳の活動が収まらないため入眠困難になり、また、寝ていても入眠を継続することが難しくなります。

つまり腎が衰えると不眠と認知症を両方引き寄せてしまう、と考えられます。

腎は加齢と共に衰える代表的な臓で、誰もが腎の衰えから逃れることはできません。
だからこそ、腎の働きを良くする補腎が重要になってきます。

補腎薬を始める目安の年齢

漢方の考えでは女性は7の倍数、男性は8の倍数で腎の働きが変化すると考えます。
女性であれば28歳、男性は32歳が腎のピークを迎えます。
そこから徐々に腎は衰え、早ければ女性は35歳、男性は40歳くらいから腎の弱りを感じるようになります。
さらに加齢が進み女性は42歳、男性は48歳くらいになると腎の弱りが顕著になり、記憶力の低下や思考力の低下、睡眠の質の低下を感じる人も増えてきます。このころになると深い睡眠の質は10代と比べて60~70%ダウンします。
女性が49歳、男性が56歳くらいになれば腎の老化は明確で、女性であれば閉経をし、男性は筋力が衰えていきます。

このように腎の衰えは個人差があるものの女性であれば42歳、男性であれば48歳くらいから顕著になるため、腎の弱りを防ぐためにも男女ともに40代から補腎薬を服用することをお勧めします。

まとめ

良い睡眠はアルツハイマー型の認知症を防ぐ可能性があります。
また、アルツハイマー型認知症を引き起こすβアミロイドは不眠を引き起こします。
良い睡眠を継続することがたった1度の人生をより豊かなものにします。
腎の働きを良くし睡眠の質を高めることを若いうちから始めるようにしましょう。

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