女性の更年期障害による不眠と漢方

中国古典では女性は7の倍数で変化すると考えられています。
特に42歳~49歳は卵巣機能も不安定になり、更年期障害に悩まされる人が多くなります。
更年期障害の代表例としては顔面紅潮やのぼせ、イライラ、心煩、寝汗などが有名ですが、不眠で悩まされる人も少なくありません。
今回は更年期障害が引き金となって起こる不眠について漢方的改善策を考えます。

原因

陰陽学説において女性は陰に属します。
つまり更年期とは陰が不足していく時期であり、急速に陰が不足することで、陽とのバランスが崩れ、陰よりも陽の方が高い状態になります。これを陰虚陽亢(いんきょようこう)と呼びます。
陽は上昇の性質があるため、気血が上昇し頭部に停滞しやすくなります。
これが顔面紅潮や火照り、イライラ、心煩、不眠を引き起こすのです。
しかし、更年期でも誰しもがこのような症状を起こすとは限りませんし、症状の重さも人それぞれです。
その違いを生み出しているのが【心労】の程度なのです。

心労は字のごとく、精神的疲労に近いものです。
心配事がある、仕事が忙しい、育児や家事に追われていて落ち着かない、そのような症状が続くと心労はピークに達し、『心労化火』という状態になります。
『火』は体と心が過度に興奮している状態です。
心労化火が続くと『モヤモヤ、ムカムカな気持ち』が、まるで小さな火が炎へと大きく変化するように、『イライラな気持ち』へと変わっていきます。
ちょっとしたことでもカーッと怒りがこみ上げ、キレてしまうような状態になってくると心火上炎(しんかじょうえん)という状態になっています。
こうなってしまうと脳が常に興奮状態、ベッドに入っても頭がグルグルと落ち着かず、心身の静寂が訪れることはありません。
そのため、入眠困難、不眠を起こすのです。

そのため、更年期中はいかに心労を減らすことが出来るかが重要なのです。

養生と漢方薬

更年期がもたらす陰虚陽亢は陰を増やし陽を抑える漢方薬を服用することが重要です。
このような漢方薬を滋陰降火薬と呼びます。
それだけでも頭部の陽気を抑えることが出来るため、睡眠の質が向上してくるでしょう。
しかし、それでも入眠困難や不眠が起きる場合は心労を補う漢方薬の服用が必要となってきます。
そのような漢方薬を養心安神薬と呼びます。
更年期障害による不眠の強さや体質に応じて服用する漢方薬を選択しましょう。

食事の養生としては絶対に食べてはいけないものがあります。
それが

  • アルコール
  • 香辛料
  • 揚げ物
  • 高カロリーな食事(特に夕食)

になります。
更年期により体内に発生した火はまさに焚火のような存在です。
焚火にアルコールや油、刺激物を投げ入れればさらに火の勢いが増す様によく似ています。
夕食は就寝前の最後の食事であるため、心火を高めるようなものは極力避けましょう。

まとめ

更年期障害と一口に言っても目立つ症状は人それぞれ違うことがあります。
それがいわゆる『体質』であり、体質に応じた対策をとることがとても重要です。
漢方は一人一人違う体質を考慮して処方を選定します。
不眠が仕事や日常に悪影響を与えないようにするためにも、早めの改善をしていきましょう。

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