性交痛と不妊と漢方

性交痛とはセックス時に起る痛みの事を指します。
性交痛がありながらも妊活をしている女性も多く、妊活への意識が低下してしまう要因になっている事もあります。
性交痛の原因は様々挙げられますが、特に多い原因として『精神的要因・ストレス』や『更年期・エストロゲンの減少』、『血行不良』が挙げられます。
これらの原因に対しては心身のバランスを整える漢方薬が効果的な場合もあります。
自分の心身を整えることで性交痛を改善し、前向きな妊活・セックスを楽しめるようにしましょう。

1.精神的要因・ストレス

性交痛を防ぐにはセックス時にしっかりと『濡れる』事が大切です。
女性は性的な興奮が高まると下半身の血流が良くなり、腟壁周辺に張り巡らされている毛細血管が拡張して血管壁が開き、その隙間から潤滑液が流れ出ます。
前戯が不十分であったり、パートナーとのセックスに対しストレスを感じると性的興奮が起こりにくく、潤滑液が分泌されにくくなるため、性交痛を起こしやすくなります。
主に性行為の始まりや挿入時に痛みを感じることが多いです。

このような状態は漢方や中医学において『気滞（きたい）』という状態を考えます。
気滞に特徴的な症状として

などの特徴がみられます。

気滞が発生している場合は、過度な緊張をほぐすような漢方薬、自律神経を整えるような漢方薬を服用します。
代表的なものとしては加味逍遙散、逍遥散、柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散などが挙げられます。
具体的には体質や状況に応じて変わってくるので服用の際は必ずご相談ください。

2.更年期・エストロゲンの減少

更年期における性交痛の主な原因は、エストロゲンの減少による膣の乾燥と膣壁の薄さが挙げられます。
更年期に入り女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると膣内の潤滑液の減少や柔軟性が低下しやすくなります。その結果、セックス時の摩擦が強まり性交痛を引き起こします。
さらに更年期中はホルモンバランスの乱れからストレスや不安感も強くなる事もあり、性交痛に拍車をかけます。
このような状態を漢方や中医学では『腎陰虚（じんいんきょ）』と考えます。
陰陽学において男性は陽、女性は陰に分類されます。
更年期に起きる女性ホルモンの低下は陰の減少ととらえます。
陰には血や水が含まれるため、陰が減少すると潤いも減少すると考えます。
また、陰が減少し相対的に陽が高まると、火照り、不眠、興奮などの症状も目立つようになります。

陰虚に特徴的な症状として

などが挙げられます。

虚が発生している場合は陰（血・水）を補うような漢方薬を服用します。
特に有名なのが婦宝当帰膠です。婦宝当帰膠は『婦人の要薬』と呼ばれ、補血作用に優れた処方です。その他にも瀉火補腎丸など様々な処方がありますが、体質により服用するものは異なるので服用の際は必ずご相談ください。

3.血行不良

血流が悪くなっていたり、動脈が固くなっていると血管壁を開くことができず、潤滑液の分泌が低下してしまいます。性的な興奮が十分あるにもかかわらず濡れにくいなどの特徴が挙げられます。
このような状態を漢方や中医学において『瘀血（おけつ）』と考えます。

瘀血に見られる特徴は

などが挙げられます。

瘀血はデスクワーカーや運動不足、睡眠不足などにより発生しやすいため、現代病の一つとも言えます。
また、瘀血は生理痛や生理不順、子宮筋腫、子宮内膜症、PCOSなどの原因にもなると考えられ、性交痛の有無にかかわらず早めに改善すべきです。
瘀血が発生している場合は血流を良くする漢方薬を服用します。
代表的なものには冠元顆粒、桂枝茯苓丸、温経湯、血府逐瘀丸などがありますが、体質により服用するものは異なるため服用の際は必ずご相談ください。