多汗と漢方
暑い日や運動中などに汗をかくのは一般的ですが、中には運動をしていなくてもじっとりと汗をかいたり、寝汗がひどいなどのケースも見られます。
漢方や中医学では、これら多汗症にも様々な原因があると考え古来より多くの研究がなされてきました。
今回は代表的な多汗症である自汗と盗汗について書いてみたいと思います。
多汗の原因
自汗
自汗とは、日中特に何もしていないにもかかわらずジワリと汗が出てくる多汗症です。
自汗は肺気不足という状態が考えられます。「肺は衛表をつかさどる」という考えが中医学にはあり、肺の気が不足することにより体表の衛気が少なくなり腠理(汗の分泌を調節する組織)が開いて異常な汗が外へ流れます。もともと虚弱体質であったり、病後であったり、咳や喘息を持っている人に多くみられます。
自汗に特徴的な症状
- 疲労しやすい
- 風邪をひきやすい
- 排便に力がない
- 顔色が白い
- 声が弱い
盗汗
盗汗とは主に睡眠時に汗をかいてしまう多汗症です。
起床時にパジャマやシャツが汗で濡れてしまうケースもあります。
特徴的なのは起床時には汗が止まることです。
寝ている間に陰(汗)を奪われることから盗汗と書きます。
盗汗は主に更年期障害など陰が不足し陽が高まっている人に起こります。
この状態を陰虚火旺と呼びます。
盗汗に特徴的な症状
- 手足が火照る
- 口が渇く
- 便秘
- イライラ
- 頭痛
- 短気
漢方薬とお勧めの食材
自汗
自汗を改善するには肺気を高める漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に玉屏風散があります。玉屏風散は黄耆、防風、白朮の3種類の生薬からなるシンプルな漢方薬です。胃腸の働きを良くする白朮も入っている事で気の生成を高め、黄耆が肺気を高めます。
年齢を問わず服用が可能なので、年配の方の肺の弱りにも、若年層の肺の弱りにも使用できます。
自汗にお勧めの食材
- ニンニク
- わさび
- ニラ
- ネギ
- 玉葱
- 菜の花
- 梨
- 柿
- スイカ
- 大根
- バナナ
- イチゴ
盗汗
盗汗は陰を補い陽を抑える漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に瀉火補腎丸があります。
補腎の基本である六味地黄丸に知母と黄柏を加えることで陰陽のバランスを整えます。
二至丹などの処方を併用するとより効果的です。
盗汗にお勧めの食材
- 牡蠣
- シジミ
- アサリ
- 海藻
- のり
- キウイフルーツ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- ゴマ
- 黒豆
- キャベツ
- ブロッコリー
- ゴボウ
- サツマイモ
- ブドウ
- 栗
- エビ
- ひじき
- トウモロコシ
- ゴーヤー
- キュウリ
- 大根
- トマト
汗は日々の生活を行う上でストレスになる要素の一つです。
病院での治療が余り功を奏さない場合は漢方薬との併用も検討してみてください。