老化予防を漢方で改善
人生100年時代と言われる現代日本。
人々が幸せに生きるための一つの課題として『どれだけ健康寿命を長くできるか』が挙げられます。また老後に限らず、心身が健康であることは人生を楽しく豊かなものにするためにとても重要です。
中医学や漢方の世界では『老化』に対しても様々な研究が行われてきました。
中医学的な『老化予防』を実践することで、老化の進行を遅らせ、健康でいられる時間を長くすることも可能かもしれません。
今回は中医学的な老化の原因を3点に絞り、その対策となる漢方薬をご紹介したいと思います。
その① 脾胃虚衰
人間が精神的にも肉体的にも前向きで明るく行動的であるためには『気』と呼ばれるエネルギーが必要不可欠です。
年配の方でも若々しい印象を与えたり、覇気を感じる方はまさに『気が充実している状態』と言えます。
逆に気が不足した状態を気虚と呼びます。
気虚になると『気持ちが弱い』『気分が良くない』『気力が沸かない』『気配りができない』『気丈にふるまえない』などを起こします。
そのため精神的にマイナス思考や内気な傾向になりがちで、ますます老化を促進させてしまいます。
いつまでも若々しく元気に生活するためには『気』が充実していることが大切です。
そしてその『気』を主に生成しているのが脾胃となります。
中医学においても脾胃は『水穀の海』と称され、食べ物を消化して気や栄養物質に変える機能があると考えられています。
脾胃により生成された気は全身の各組織に運搬され成長や発育に関わります。つまり脾胃が弱い人は、成長や発育に遅れが出やすく、老化現象も早くから現れます。
脾胃虚衰は現代風に言えば胃腸虚弱であるため、表れやすい症状としては
- 食欲不振
- 倦怠感
- 疲労しやすい
- 下痢や軟便
- 浮腫み
- 鈍い頭痛
などがあります。
脾胃は冷飲冷食や消化の良くない食事により機能が低下します。
若いころからファストフードや冷たい飲み物、油っこいものを食べ過ぎると脾胃が損傷しやすくなるので、お子様の食事には気を配っていただきたいところです。
脾胃の働きは加齢と共に低下するため、普段の食事から気と栄養をしっかりと生成するためにも脾胃の働きを高める漢方薬を服用すると老化予防に効果的でしょう。
お勧めの漢方薬
星火健胃顆粒
六君子湯をベースに木香・縮砂を加えた処方になります。この処方の特徴は木香・縮砂が入ることで気の流れが良くなることです。『気の流れが良くなる』というのは簡潔に言えば、『ストレスによる不調が緩和される』ということで、ストレスなどから胃の動きが悪くなる人に効果的です。年齢を重ねてくると気の流れは停滞しやすくなるため、鬱々としたりイライラする傾向があります。気の流れが良くなることで胃の動きも柔軟になり自然と食欲が出てくるでしょう。六君子湯ベースなので胃もたれや下痢などの症状にも効果的です。
その② 腎気虚衰
中医学における『腎』は西洋医学的な腎臓とは少し意味合いが違います。腎は脳の働きや骨の強さ、髪の状態、呼吸の深さ、体の潤い、生殖能力、耳などにとても深い関係があります。
そのため、腎が弱ると表れる症状としては
- 脳の働きが弱くなる
- 白髪、抜け毛
- 呼吸が浅くなる
- 皮膚や腸内の乾燥
- 生殖能力の低下
- 音が聞き取りにくくなる
などがあります。
脾胃の弱りが老化の進行を促進させるものだとすると、腎が弱ると老化現象そのものが起きてくるイメージです。
また腎は、五臓の中で特に生まれつきの強さ弱さがでやすい臓といえます。
生まれながらに腎が弱い人は発育が遅く骨格も弱く、物忘れや記憶力の弱りなどが見られます。若い時からそのような症状がみられるのであれば腎の働きを良くする漢方薬を服用することも大切です。
腎の弱りは男性であれば40歳、女性であれば35歳くらいから感じられることもあります。老年期になる前から腎の働きを良くする漢方薬を服用することで、老化の進行を遅らせることもできるかもしれません。
お勧めの漢方薬
腎の状態が衰える『腎虚』には細かく見ると腎陰虚と腎陽虚があるため、補腎薬であれば何でも良いという事でもありません。
腎陰虚に見られる特徴には、
- 腰痛
- ほてり
- のぼせ
- 口の渇き
- 痩せてしまう
などがあり
腎陽虚に見られる特徴には、
- 腰の冷え
- 腰痛
- 手足の冷え
- 頻尿
- 精力減退
- 浮腫み
などがあります。
自分の状態を見極めるのは意外と難しいものです。補腎薬を選ぶ際は必ずご相談の上、服用してください。
腎陰虚にお勧めの補腎薬には
杞菊地黄丸、瀉火補腎丸、八仙丸などがあります。
杞菊地黄丸
六味地黄丸に枸杞子と菊花を合わせた処方構成です。
枸杞子と菊花は眼精疲労や眼病、こめかみの痛みなどに良いため、加齢とともに現れる目のトラブルが気になる方にお勧めです。
極端な清熱薬は入っていないため腎陰虚の症状が特に強い場合はほかの処方を選ぶこともありますが、長く服用することで肝と腎の働きを高めるため、老化予防の代表的な処方と言えるでしょう。
瀉火補腎丸
六味地黄丸に知母と黄柏という虚熱を清する生薬を合わせた処方構成です。
腎陰虚の症状が特に強い方にお勧めで、加齢と共に手足が熱かったり、頬のあたりが赤くなったり、口が乾いたり、血圧が上がりやすくなる人にお勧めです。腎陰虚の症状が治まるようであれば杞菊地黄丸や八仙丸などに変更すると良いでしょう。
八仙丸
六味地黄丸に補陰作用のある麦門冬、そして止咳作用や生津作用のある五味子を合わせた処方構成です。
加齢と共に咳や喘息が伴う人にお勧めです。長期的な服用も可能であるため喫煙習慣がある方や肌や粘膜の乾燥が気になる方に良いでしょう。
腎陽虚にお勧めの補腎薬の代表例として参馬補腎丸があります。
参馬補腎丸
中医学的に脾と腎を強化する処方構成になっています。脾の働きを強化する事で食べたものからしっかりとエネルギーを生成できるようにし、なおかつ腎の働きを良くするため、老化予防の漢方薬としてお勧めできます。ただ動物系の生薬が少し物足りないところもあるので、すでに老化を実感しているようであれば、より動物系生薬が多く含まれる至宝三鞭丸や亀鹿仙などに健胃顆粒、晶三仙、健脾散などを合わせてみるのも良いでしょう。
その③ 瘀血
血液は全身をめぐりながら各組織に栄養を分配し、また各組織で生まれた老廃物を除去する役割があります。瘀血とは血行不良に近い状態で、瘀血になると体に栄養を分配する力が落ち、また体内で生成された老廃物を除去する力も衰えてしまいます。
まさに老化を加速させる症状と言えるでしょう。
また血の流れは気の流れに比例するため、気が不足している気虚や気の流れが良くない気滞の状態になると瘀血を加速させます。
そのため、加齢により気が弱くなってくると血の流れも悪くなり様々な老人性疾患を招きます。
瘀血が原因で起こる西洋的な症状に高血圧、動脈硬化、狭心症、脳血管障害などがあります。どれも生死に直結する症状であるため、瘀血は老化予防という言葉以上に重要な改善点です。
瘀血は現代でいう血行不良に近い症状であるため、表れやすい症状としては
- 頭痛
- 肩こり
- 顔色が暗い
- 唇の色が暗い
- 目のふちにクマができやすい
- 頭が重く感じる
- めまい
- 動悸
- ひざや腰など間接が痛みやすい
などがあります。
瘀血は運動不足や高脂質&高糖質な食事、睡眠不足、デスクワークなどで症状が進みやすくなるため、日頃からの生活習慣がとても重要です。
しかし、栃木県は車社会であるため運動不足の人が多く、また加齢と共に睡眠が不十分になったり、日中座りっぱなしで生活することも増えてくるため、現実的には生活習慣を変えることはとても困難かもしれません。
加齢のトラブルとして脾胃のケア、腎のケアを挙げてきましたが、瘀血に関しては特に積極的な漢方薬の服用をお勧めしたいところです。
お勧めの漢方薬
冠元顆粒
丹参という生薬を主薬にしている瘀血を改善する代表的な処方です。
配合生薬の川芎は『血中の気薬』と呼ばれ、血流を良くするとともにストレスの緩和にも効果的です。また赤芍は止痛作用もあり紅花・川芎と共に頭痛や生理痛の緩和にも重宝します。
構成生薬のすべてに瘀血を改善する働きがあるため、老化予防に関係なく運動習慣がない方や血行不良が気になる方は服用すると良いでしょう。
動悸や息切れ、疲労感が強い場合は麦味参顆粒との併用がとてもお勧めです。
麦味参顆粒の中には人参が配合されています。人参は有名な補気薬で『血を流すのは気の推動作用』を高めます。
今回は老化を加速させる3つの要因として脾胃虚衰、腎気虚衰、瘀血を挙げました。
- 脾胃虚衰→気を作れなくなる
- 腎気虚衰→老化現象そのものが表れやすくなる
- 瘀血 →体の老化を加速させる
とイメージしていただければ幸いです。
老化を予防するためには
脾胃の働きを良くする漢方薬+腎を元気にする漢方薬+血行を良くする漢方薬の3点から考えていきましょう。
唯一無二の自分の人生、少しでも元気で長生きのためにも漢方薬でケアをしてください。