帰宅恐怖症を漢方で改善

「帰宅恐怖症」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか?書籍「帰宅恐怖症」によると「妻が怖い」「妻がいつ機嫌を損ねるのかびくびくしている」「妻に過度に気を使う」などが引き金になり、帰宅するのが怖くなるという状態です。
具体的には「常に妻の顔色をうかがい、妻とのやり取りにも疲れ、帰宅が億劫になり、仕事が終わっても会社に居残り、まっすぐ家に帰らず、我が家を目の前にしても近くの公園のブランコで家の灯りが消えるのを待つ…(小林美智子著 『帰宅恐怖症』より)」という状態だそうです。
この書籍では夫が妻を恐れて帰宅できない、という内容でしたが、当店では男性・女性に限らず「パートナーの態度が怖くて帰宅したくない」というご相談がございます。
またこの帰宅恐怖症のお客様に中医学的なアプローチをしたところ改善している例もみられたため、今回はこの帰宅恐怖症に対する中医学的アプローチのご紹介したいと思います。

中医学的に考えられる原因

気虚(ききょ)

そもそも我々の体には外邪から体を守るために衛気(えき)と呼ばれるものがあります。
衛気はまさに衛兵のように我々の体の周りを取り囲んでいて、花粉やほこり、ばい菌、ウィルスなどから体を守る存在です。衛気が充実していると外邪(外からの病因となる物質)から体を守ってくれます。
攻撃的な言葉や怒りの表情、態度を受けることは一種の「外邪」による攻撃と考えられます。このときに体を守る気が不足していると攻撃的な言葉が体の奥底にズドンと侵入してしまいます。病気や疲労が溜まっている時、睡眠不足の時に辛辣な言葉を浴びるとショックが大きいのはこの理由が考えらえます。

気滞(きたい)

気とはエネルギーの一種で常に滞りなく体中を巡っているのが理想的です。
気滞とはまさに「気の流れが鬱滞した状態」です。鬱滞と言う表現に「鬱」と言う言葉があるように、気の流れが悪くなると人は緊張感を感じやすくなります。
特に気が充実している人は興奮状態や怒りの状態になる事がありますが、気が不足している人は鬱やマイナス思考の状態に陥ってしまいます。
気滞から鬱になる人は、目の疲れ、頭痛、ため息が出る、運動習慣がない、などの特徴があります。
攻撃的な言葉を言われても言い返す力がない、言い返す気力も湧かない、その場から逃げだしたい、というのは気虚と気滞が合わさった状態と言えるでしょう。
このように帰宅恐怖症のお客様をカウンセリングしていると気虚と気滞による原因が多いように感じられます。
そのため、改善していくには気(エネルギー)を充実させる事、気の流れを改善していくことがポイントになります。

お勧めの漢方薬(気虚にお勧めの漢方薬)

衛益顆粒

この処方は黄耆、防風、白朮の3種類からなるとてもシンプルな漢方薬です。
玉屏風散という処方を基本としておりまさに「体の周りに玉(素晴らしい)屏風を立てるように体を外邪から守る」ことを目的としています。一般的にはアレルギーや免疫力の向上などに使用される処方ですが、攻撃的な言葉を外邪と考えた場合に応用が可能と思われます。

逍遥丸

逍遥とは「気ままに散歩する」と言う意味があり、気滞症状を改善してくれます。
仕事で煮詰まった時や緊張した時に散歩をすると気が楽になる経験をしたことがあるかと思います。逍遥丸は気の流れを良くするだけでなく補血作用もあるので、月経による定期的な出血がある女性にもお勧めです。錠剤タイプもあり持ち運びも便利なので、鞄の中に入れておいて緊張しそうなときに服用するのも良いでしょう。

心脾顆粒

心脾顆粒は字のごとく「心(精神活動)と脾(消化器系)を元気にしてくれる」処方です。
「やるべきことが分かっていても行動できない」「記憶力が低下した」「漠然とした不安感に襲われる」「眠りが浅い気がする」など心身が弱っている状態を根本から改善してくれます。1日2回の服用で、飲み口も甘みがあるので帰宅恐怖症以外にも精神的な疲労で弱っている方にとても人気があります。継続して服用する事をお勧めします。

まとめ

今回は中医学的に被攻撃者の心や体を整えたことによる改善例から原因や処方をご紹介させていただきました。しかし、被攻撃者がいれば攻撃者がいるように、攻撃者が「攻撃的になってしまう原因」もまた考える必要があるでしょう。もしかしたら自律神経の乱れやホルモンバランスの乱れから「攻撃したくないのにしてしまう」というトラブルに陥っている可能性もあるからです。
また、被攻撃者が攻撃に冷静に対応できるようになったら、夫婦間で話し合うこともとても重要です。
大切なことは引き返せないほどに辛くなる前に解決する事です。
心のトラブルは我慢しないことが大切です。心当たりがある方はぜひご相談下さい。

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