乳腺症を漢方で改善
乳腺症とは
乳腺症とは乳腺における様々な変化や状態に対する総称を言います。
性ホルモン(特にエストロゲン)の過剰分泌が原因となる事が多いのですが、それほど重い病気になる事もなく自然に回復することも多いため、積極的な治療を必要としないケースもあります。
病院ではダナゾールや鎮痛剤などで痛みを軽減する対処療法が一般的となっています。
しかし、局部の腫れや痛みなどの不快感はストレスの原因となる事もあり体質不良のサインと考えることもあります。
中医学では乳腺症に対する検証や考察が古来より行われており、生薬治療による良好な結果も得られています。
乳腺症を体からの体質改善のサインとみて中医学的な体質改善をしていきましょう。
中医学における乳腺症の原因と漢方薬
肝気鬱結
乳房は肝の経絡が流れているため、肝のトラブルが原因となる事があります。肝は今でいう自律神経のコントロールのような役割もあるため、「肝の乱れ=自律神経の乱れ」と考えても良いでしょう。肝が乱れる原因として多いのがストレスです。ストレスによる肝の気の流れが乱れた状態を肝気鬱結と呼びます。
乳腺症が生理前後の感情の変化に左右される人が多いことからも、肝との関連が考えられます。
肝気鬱結が原因で起こる乳腺症の人はそのほかの症状として頭痛、イライラ、鬱々、不安感、心煩、お腹の張りなどが表れやすくなります。
このタイプにお勧めの漢方薬としては血府逐瘀丸や加味逍遥散などがあります。
特に血府逐瘀丸は気の流れを良くする生薬群と血行を良くする生薬群からなるため、「血行不良が気になるストレス体質」の人にはお勧めです。ほぼ無味無臭の丸薬タイプで水での服用が可能なため漢方薬に抵抗がある人にも人気があります。
痰凝脾虚
脾は食べた物を体に必要な栄養やエネルギーに変換する場所であり、現代でいう胃腸のようなイメージです。
食事の不摂生が続くと体にとって余分なもの「痰湿」が生成され、痰湿が経絡に溜まって気の流れが阻害されるとしこりを感じる事があります。肝気鬱結に比べると長引くことが特徴です。
痰凝脾虚が原因で起こる乳腺症の人はそのほかの症状として、胸が重苦しい、やや肥満気味、頭重、めまい、体全体が怠い、舌に苔が厚く生える、などが表れやすくなります。
このタイプにお勧めの漢方薬としては半夏厚朴湯や二陳湯などがあります。半夏厚朴湯は体の痰湿を取り除き、気の巡りを良くする処方であるため、乳腺症以外にも喉の詰まる感じ(梅核気)や胸の重苦しい感じにも応用できます。肝気の巡り改善が十分でない場合は加味逍遥散などと併用するのも良いでしょう。
肝腎虚弱
腎は生殖機能やホルモン系にも非常に関連する臓です。肝と腎は非常に関係が深く腎は肝の働きを助ける役割もあります(腎と肝は相生の関係にあります)。
腎は過度な性生活や、加齢、疲労などにより働きが弱くなります。腎の働きが低下すると肝の働きも低下すると考えられます。これは西洋医学における乳腺症とホルモンバランスの乱れの関連性に近い考え方です。
「外科医案」にも「乳中結核、雲肝病、本在腎」と記載されており「乳中の核(しこり)は肝病をいうが、本は腎にあり」と記載されています。
肝腎虚弱が原因で起こる乳腺症の人はそのほかの症状として、生理周期の乱れ、不妊、腰痛、めまい、眼精疲労、下半身の冷え症などが表れやすくなります。
このタイプにお勧めの漢方薬として知柏地黄丸や杞菊地黄丸があります。
共に六味地黄丸を基本処方としていますが、知柏地黄丸は知母と黄柏が、杞菊地黄丸は枸杞子と菊花が入っています。
その人の状況や体質に応じて使い分けると良いでしょう。
また肝腎虚弱は肝の弱りにもつながり肝気鬱結を引き起こすこともあります。強いストレス症状がみられる場合は加味逍遥散などと併用することも大切です。
身体に起こるあらゆる反応は体からのサインと考えましょう。乳腺症も積極的な治療が必要ない場合も多いですが、体調不良の兆しと考えるとまだ症状としては表れていない病を早期に改善できるかもしれません。
早め早めの対策を練っていきましょう!