冷え性と漢方
多くの女性を困らせる冷え性ですが、最近では男性の冷え性のご相談も珍しくありません。リモートワークによる運動不足が原因とも言われていますが、一口に冷え性と言っても、原因は様々です。
今回は漢方における冷え性の原因とお勧めの漢方薬、食材をご紹介します。
冷え性の原因
冷え性には様々な種類があります。
微妙な違いも含めると、寒さのタイプは11種類にも及びますが、原因を大きく分けると3つに絞ることが出来ます。
その3つの冷え性の原因をみていきましょう。
陽気不足
多くの冷え性は陽気不足が原因とも言われます。
人間には気と呼ばれるエネルギーがあります。気は心身を活動的にする働きがありますが、気は陽に属するため、気が不足すると体を温める力が低下します。
また、気は衛気と呼ばれる免疫力に近い働きもあるため、気の不足は風邪をひきやすいなどの特徴も招きます。
陽気不足に起こりやすい症状
- 手足が冷える、酷い場合は、肘や膝まで冷える
- 顔色が白い
- 浮腫みやすい
- 軟便気味
- 疲れやすい
陽気鬱阻
陽気鬱阻とは、気の流れが悪い状態を指します。
ストレスなどがかかると気の巡りをコントロールする肝の働きが失調します。
陽気が足りていても、流れていない場所は冷えを生じます。
陽気不足に比べると冷えの度合いは軽く、運動などにより気の巡りが良くなれば比較的簡単に改善されるため、悩むほどではないという人も多いです。
陽気鬱阻に起こりやすい症状
- イライラや鬱々
- 口が渇くことがある
- 頭痛
- お腹の張り
血虚
血虚は貧血傾向の女性に多く見られます。
血には温養機能があり、全身に栄養を運搬し、温める働きがあります。
そのため流れる血の量が不足、もしくは血流が悪くなると冷えを生じます。
血虚に起こりやすい症状
- 冷たい風に当たると冷える(冷たい風を嫌がる)
- 顔色が良くない(蒼白もしくは萎黄)
- 生理痛があり、時として生理不順
- 不安感 ・不眠 ・肌荒れ ・目の疲れ
漢方薬とお勧めの食材
陽気不足
陽気不足を改善するには気を補い、寒邪(寒さをもたらす要因)を払いのける漢方薬がお勧めです。
冷え性がさほど強くなければ補中益気湯が良いでしょう。気を補う代表的な漢方薬で比較的日本人にも馴染みがあります。その他にも四逆湯などがあります。四逆湯は寒邪を払いのける特徴が強く、寒い場所に行くときに重宝します。
気を補うお勧めの食材
- ニンジン
- ジャガイモ
- サツマイモ
- サトイモ
- 山芋
- 舞茸
- 椎茸
- 肉類全般
- 鰻
- 鱈
- 鮭
- 秋刀魚
- 鯖
- 鰹
- 鰯
- タコ
- イカ
- 米
- 卵
- 小麦
- 生姜
陽気鬱阻
陽気鬱阻は全身に気を巡らせつつ、体を温める漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に四逆散や逍遥顆粒などが挙げられます。
気の流れを良くし精神的なリラックスを促し、気血の巡りを改善することが出来ます。原因にも書いたように陽気鬱阻による冷え性は軽いものが多く、場合によっては運動や散歩、入浴などでも比較的簡単に改善が見込めます。どうしても運動する時間がない人などは漢方薬を服用するのも良いでしょう。
陽気鬱阻にお勧めの食材
- キャベツ
- ニラ
- ネギ
- レモン
- ミカン
- 梅
- 酢
- 玉葱
- ナス
- 鯵
- 鰯
- 秋刀魚
- ひじき
- サクランボ
- 桃
- 紅花
血虚
血虚は血を補う補血薬を中心に血流を良くしたり、寒邪を払いのける漢方薬がお勧めです。
代表的なものに婦宝当帰膠や冠元顆粒、当帰四逆加呉茱萸生姜湯、温経湯などが挙げられます。特に婦宝当帰膠は補血作用が高いため、生理がある女性にはお勧めです。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は寒邪を払いのける力は強いので、寒い環境で過ごす時はお守りとして持っていくとも良いでしょう。
温経湯は寒邪を払いのける力はさほど高くないですが、気血を補うことが出来るので陽気不足と重なる場合はお勧めです。冠元顆粒は血流を改善する力が高く温めるため、婦宝当帰膠と併用すると良いでしょう。
血虚にお勧めの食材
- 肉類全般
- 赤身の魚全般
- 鰻
- アサリ
- シジミ
- 牡蠣
- ひじき
- 卵
- ほうれん草
- 小松菜
- 玉葱
- ニンジン
- イチゴ
- ブドウ
- 棗
- 桃
- ライチ
冷えは万病の元、とも言われるように冷え性は体質を改善することがとても大切です。
体質はすぐには変わらないため、冬に冷えでお困りな方は秋口くらいからはスタートするようにしましょう。