慢性の咳と漢方
咳は風邪などをひいたときに起こる一過性のものと、体質の弱りからくる長期の咳があります。
長期の咳は咳のみにアプローチするだけでなく、体質的な要素を考慮して改善していきます。
長期の咳をもたらす体質的原因と改善方法をみていきましょう。
長期の咳の原因
肺気陰両虚
肺気陰両虚とは肺の気と陰が不足した状態です。
気とはエネルギーのような存在で、肺気が不足すると肺を正常に動かす力が弱くなります。
陰は潤いのような存在で、肺の陰が不足すると気の上昇を抑えきれず、咳が出やすくなります。
肺気陰両虚の特徴的な症状
- 力のない乾いた咳
- 疲労感
- 便秘気味(排便する力が弱い)
- 風邪をひきやすい
- 乾燥肌
脾失運化
脾は口にしたものを消化し気血水へと変換し、全身に運ぶ役割があります。
脾、つまり消化器系の弱い人は脾の運化機能が低下し、特に水の流れが悪くなります。
これが痰となりのど元に溜まりやすくなることで、痰の絡まった咳を起こします。
脾と肺については『脾は生痰の源、肺は貯痰の器』という関係性があり、脾と肺の弱りは全身の水分代謝に悪影響を及ぼします。
脾失運化の特徴的な症状
- 痰が絡む咳
- 食欲不振
- 疲労感
- 浮腫み
- 軟便
- 倦怠感
- 頭重感
- 鈍い頭痛
腎虚
腎には『納気を主る』という働きがあり、気を下腹部まで降ろす役割があります。
納気が不十分になると吸った気が下に降りにくくなり、呼吸が浅くなり、悪化すると咳になります。
腎は『人の老化は腎の老化』という言葉があるほど、加齢と共に弱っていく臓と考えられ、老年期の慢性的な咳は腎の衰えを無視することはできません。 また、「肺は気の主、腎は気の根」とも言われ、肺と腎は気の流れに大きく関わります。
腎虚の特徴的な症状
- 腰痛
- 精力の低下
- 疲労感
- 白髪
- 抜け毛
- 睡眠の質の低下
- 頻尿
漢方薬とお勧めの食材
肺気陰両虚
肺気陰両虚は肺の気と陰を補う漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に麦門冬湯や生脈散、玉屏風散などがあります。
麦門冬湯は麦門冬で陰を補いつつ、人参で気を補うことができます。おもに乾いた咳が続く場合に良いでしょう。
似たような処方に生脈散があります。人参、麦門冬、五味子からなるシンプルな処方で気と陰を同時に補います。
玉屏風散は陰を補う力はないですが、気を補い衛気(バリアのような気)を高めることが出来ます。
お勧めの食材
- ニンニク
- わさび
- ニラ
- ネギ
- 玉葱
- 菜の花
- 梨
- 柿
- スイカ
- 大根
- バナナ
- イチゴ
脾失運化
脾失運化は脾の働きを高める漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に六君子湯や香砂六君子湯があります。
六君子湯は脾胃の強化の基本で、痰が絡むような場合に用います。特に香砂六君子湯は木香と縮砂という気の巡りを良くする生薬が入っているため、ストレスなどで脾胃の働きが良くない場合にお勧めです。実際には香砂六君子湯の方が使用することが多いです。
お腹周りに水がポチャポチャと溜まるような感じや顔の浮腫み、立ち眩みが強ければ、補中益気湯なども良いでしょう。
脾失運化にお勧めの食材
- 小麦
- ハトムギ
- 蕎麦
- とうふ
- 白菜
- 冬瓜
- 大根
- 柿
- スイカ
- バナナ
- 梨
- 大豆
- 黒豆
- 米
- 山芋
- ニンジン
- キャベツ
- サツマイモ
- インゲン
- もやし
- リンゴ
- ブドウ
腎虚
腎虚による咳を改善するには腎と肺の働きを良くする漢方薬がお勧めです。
代表的な漢方薬に八仙丸があります。
八仙丸は六味地黄丸に麦門冬と五味子が加わったもので、腎を補いながら、咳を止める目的があります。
また、ほかの体質に応じて補腎薬と麦味参顆粒や麦門冬湯を併せることも可能です。
腎虚は腎陰虚や腎陽虚など細分されており、そのタイプを見間違えて漢方薬を選ぶとかえって体調を崩すこともあります。
服用する際は必ずご相談ください。
腎虚にお勧めの食材
- 牡蠣
- シジミ
- アサリ
- 海藻
- のり
- キウイフルーツ
- アワビ
- クラゲ
- イカ
- 貝柱
- ゴマ
- 黒豆
- キャベツ
- ブロッコリー
- ゴボウ
- サツマイモ
- ブドウ
- 栗
- エビ
- ひじき
- トウモロコシ
- ゴーヤー
- キュウリ
- 大根
- 羊肉
- エビ
- 鰻
- ナマコ
- クルミ
- ニラ
- アワビ
- クラゲ
- 貝柱
- 豆
- ゴマ
- 小麦
- 山芋
- クルミ
- クコの実
咳は慢性化すると体力の低下を招くこともあるため、深刻になる前に改善する必要があります。
特に日頃から咳や息苦しさがある場合は注意が必要です。
たかが咳、されど咳。
早めの体質改善を行いましょう。