不眠とキレやすい性格の相関性
すぐに怒鳴る、殴ってしまう、暴れてしまう。
世の中にはいわゆる『キレやすい人』がいます。『キレる性格』は仕事の面でも交友面でも家庭においてもマイナス要因であることは間違いありません。
人はなぜキレるのか?その原因の一つに脳の中の偏桃体の異常興奮が考えられます。
偏桃体とは右脳と左脳に1つずつあり、怒りの感情を生む部位です。
とある研究では睡眠不足を起こすと偏桃体の反応が60%も増幅したという報告があります。
つまり、睡眠不足を起こしている人は突発的に怒りの感情がむき出しになりやすくなるのです。
また睡眠不足を起こすと前頭前皮質と偏桃体のつながりが悪くなることも分かっています。
前頭前皮質とは合理性、論理性、意思決定を司る場所で霊長類の中で人類が最も発達しています。
十分な睡眠をとれている人は偏桃体と前頭前皮質の結びつきが強いため、たとえ怒りの感情が芽生えるような場面でも、
『怒ることが適切か?』
『怒るメリットがあるか?』
『怒ることで何か悪いことは起きないか?』
『攻撃をする必要があるか?』
など怒りの感情にブレーキがかかり、怒りに任せた感情的な行動を抑制します。
睡眠不足は人を『怒りの感情にブレーキがかからない暴走車』と同じにしてしまいます。
・加齢により睡眠時間が減っている
・仕事が忙しく睡眠時間を削っている
・心配事があって入眠が出来ない
・育児中で十分な睡眠時間が確保できない
などの人はこのリスクと隣り合わせにあるのです。
【キレる性格と不眠を漢方で改善する】
不眠によりキレる性格を改善するうえで漢方的に考えるとキーワードは『肝陽上亢』です。
陰陽学説において
陽→昼、行動、上昇、太陽、明るい
陰→夜、停止、下降、月、暗い
などの特徴があります。
陰と陽はバランスを保つことが重要です。
睡眠不足の人は陰の時間(休息)が減り、陽の時間(行動)が過剰になる傾向があります。
陰が不足したことで陽を抑えることが出来ない状態が肝陽上亢です。
肝陽上亢の特徴は
・ソワソワする ・怒りっぽい ・頭痛 ・顔色が赤い ・目が充血する
・多夢 ・足腰が怠い ・舌が赤い
などの特徴があります。
陰が不足して陽を抑えられない、というのは先ほどの前頭前皮質が偏桃体の過活動を制御できない、という西洋医学的な見解とも似ています。
これらの症状が目立つ場合に服用する漢方薬は一般的に滋陰平肝潜陽薬と呼ばれます。
様々な種類がありますが、代表的な漢方薬として杞菊地黄丸が挙げられます。
また日頃からストレスがかかる生活をしている人は疏肝理気薬などを併用したり、明らかに陽が上がり過ぎて攻撃性が増し入眠も難しい場合は重鎮安神薬などの併用も検討する必要があります。
症状の度合いやその他の体質も併せて漢方薬を選択する必要があるため、服用の際は必ずご相談ください。
まとめ
キレやすい体質と不眠には間違いなく相関性があります。
キレやすい体質がゆえに不眠になるのか、不眠がゆえにキレやすい体質になるのかは、『卵が先か鶏が先か』によく似ています。
どちらにしても改善方法は共通している場合が多いので、少しでも症状が気になる場合はお早めにご相談ください。